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Text File  |  2000-07-11  |  4KB  |  148 lines

  1. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  2.  
  3. 17章  転調(3)
  4.  
  5. ────────────────────────────
  6.  
  7.  前章までに述べてきた転調はドミナントモーションがきっか
  8.  
  9. けとなる理論的なものだったり、平行移動による順次的な脈絡
  10.  
  11. で説明できる転調でした。
  12.  
  13.  これに対して突然転調という、理論の範疇を無視して流れを
  14.  
  15. 強引に変えてしまうブッ飛んだ転調があります。しかし、見よ
  16.  
  17. うによればその「唐突さ」も転調の魅力であり、トリッキー、
  18.  
  19. かつ、聴いてうなってしまうような見事な転調の追求も面白い
  20.  
  21. ものという気がします。
  22.  
  23.  とはいいつつ、ここで使う「突然転調」は少なからず「俺用
  24.  
  25. 語」であり、正しくは、楽典によれば突然転調はトニックが直
  26.  
  27. 結したもの、という説明があるので先にこちらを解説しておき
  28.  
  29. ましょう。
  30.  
  31.  
  32. ────────────────────────────
  33.  トニックから転調
  34. ────────────────────────────
  35.  
  36.  おそらく、あらゆる転調の中でも最も簡単な方法です。とに
  37.  
  38. かくコード進行の中で、トニックで終わる部分から転調します。
  39.  
  40. これはトニックがいかなる状況でもどんなコードにも進行可能
  41.  
  42. である、という機能上の性質を利用したものです。ここではキ
  43.  
  44. ーの変わり目を明確にするため、メロディライン、またはハー
  45.  
  46. モニーに強力な終止感が必要となります。よって代理トニック
  47.  
  48. ではダメで、正調トニックでなければ効果がありません。和声
  49.  
  50. 的にも、新調前の段落感、という点で、あらかじめドミナント
  51.  
  52. (ツー・ファイブ含む)で新調を導く準備をするドミナント転
  53.  
  54. 調との差異になります。
  55.  
  56.  
  57. ◎ トニックから転調        TYPE=OPM:SMP\S147_20.ZMS
  58. ◎ ソースを見る            TYPE=DOC:SMP\S147_20.ZMS
  59.  
  60.  
  61.  Aマイナー4小節の後、トニックからBマイナーキーへ上が
  62.  
  63. って同じ内容を繰り返し、Bマイナーのトニックから再びAマ
  64.  
  65. イナーへ戻ります。この方法のありがたいところは、どんなキ
  66.  
  67. ーへ転調しても、転調先でトニックへ解決すれば、そこから簡
  68.  
  69. 単に元のキーへ戻れることでしょう。
  70.  
  71.  さて、転調先の選び方ですが、これといった決まりがあるわ
  72.  
  73. けはなく、どんなキーへも進入可能。いかにも「転調らしい」
  74.  
  75. 転調感の強いは転調は、半音、M3rd上やオーギュメント上(+5th)
  76.  
  77. への転調です。これはスケールの色彩の点で元調との差異があ
  78.  
  79. まりにも大きいためですが、また一方で、両方のキーの間の共
  80.  
  81. 通性を生かしたキーを選ぶのも有効。うまくすれば、2つのキ
  82.  
  83. ーにわたってまったく同じメロディラインを保つ事もできます。
  84.  
  85. Cメジャーなら共通音の多いFメジャーやGメジャー(いずれ
  86.  
  87. も近親調)が狙い目です。
  88.  
  89.  
  90. ◎ C→Fでも同じメロ        TYPE=OPM:SMP\S147_21.ZMS
  91. ◎ ソースを見る            TYPE=DOC:SMP\S147_21.ZMS
  92.  
  93.  
  94. ────────────────────────────
  95.  脈絡なく転調
  96. ────────────────────────────
  97.  
  98.  ブッ飛んだ方の突然転調ですが、書いた通り、これには理論
  99.  
  100. 的な説明をつけることはできません。
  101.  
  102.  よくあるパターンとしては、例えばツー・ファイブ→まった
  103.  
  104. く関係のないキーへの進行、というのがあります。これは先読
  105.  
  106. みされがちな流れであるドミナントモーションの解決先に、予
  107.  
  108. 想外の展開を置いて聞き手の予想を裏切る、という効果を狙っ
  109.  
  110. たものと思われます。
  111.  
  112.  
  113. ◎ サンプル            TYPE=OPM:SMP\S147_22.ZMS
  114. ◎ ソースを見る            TYPE=DOC:SMP\S147_22.ZMS
  115.  
  116.  これは2小節のユニット単位でm3rdずつどんどん上に転調し
  117.  
  118. ていく例ですが、それぞれのキーの変わり目に次のキーを暗示
  119.  
  120. させる新調ドミナントを配せず、元のキーのセカンダリードミ
  121.  
  122. ナントからぜんぜん関係のないキーに転調しています。
  123.  
  124.  
  125. ◎ サンプル            TYPE=OPM:SMP\S147_23.ZMS
  126. ◎ ソースを見る            TYPE=DOC:SMP\S147_23.ZMS
  127.  
  128.  
  129.  これもきっかけのない転調例ですが、ちょっと大袈裟すぎる
  130.  
  131. パターンになっています。Cメジャーから飛びまくってCメジ
  132.  
  133. ャーに戻って落ち着くのですが、その間、転調のタイミングを
  134.  
  135. フレキシブルにして、なおかつそれぞれのキーでの進行に統一
  136.  
  137. 的な規則性を持たせないことでキーをわかりにくくしています。
  138.  
  139. 下手すると自分でもキーがわからなくなってアレンジの時に困
  140.  
  141. ったりするのでコメントを入れておくなりしてキチッと把握し
  142.  
  143. ておかないとまずいでしょう。
  144.  
  145.  
  146.  
  147. (EOF)
  148.